バリュープロポジションは、「顧客のニーズが高く、かつ競合他社が提供できていない独自の価値」のこと。
本記事では、バリュープロポジションの基礎知識や成功事例だけでなく、フレームワーク、バリュープロポジションキャンバスの書き方やポイントまで解説します。
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目次
まずは、バリュープロポジションの基礎知識を解説します。
バリュープロポジションとは、「顧客のニーズが高く、かつ競合他社が提供できていない独自の価値」のこと。
※その他にも、バリュープロポジションにはいくつかの定義があります。
出典:アレックス・オルターワルダー『バリュー・プロポジション・デザイン』(2015)
マーケティング用語としても知られていますが、近年は用途が広義になり、サービス開発の文脈で注目されるようになっています。
競合の商品やサービスが乱立している現在の市場において、顧客に自社の商品・サービスを選んでもらうためには、自社が提供できる独自の価値を顧客のニーズにマッチさせる必要があります。
しかし、競合との差別化を図ろうとするあまり、顧客の求める価値と自社が提供できている価値にズレが生じてしまっては成功につながりません。
つまり、競合との差別化そのものではなく、“競合以上にユーザーニーズにマッチした商品・サービスを提供しているか”を重視する必要があるということです。
バリュープロポジションを活用することで、顧客のニーズと自社が提供できている独自の価値のズレを明確化することが可能になるため、さまざまな製品・サービス開発において重視されています。
バリュープロポジションを作ることで、顧客目線に立った自社の商品・サービスが持つ独自の価値を見出すことができます。これにより、現時点で顧客に提供できている価値と、顧客の求めている価値のズレを明確化できます。
顧客のニーズにあった価値を最大化していくことは、競合との差別化ができるだけでなく、無駄な開発に費やすコスト削減にもつながります。
バリュープロポジションは、各業界をリードする著名なサービスの中にも取り入れられています。ここではバリュープロポジションの成功事例を紹介します。
AppleがiPhoneの開発で着目したバリュープロポジションは、スマートフォンを単なる機能の集合体にするのではなく、美しいデザインと直感的な操作が可能なUXを兼ね備えた製品にするという点。
当時の携帯電話市場において、さまざまな機能を搭載しているデバイスは存在していましたが、機能をすべて使いこなすには直感的な操作がしづらいという課題を抱えていました。
しかし、ユーザーが直感的に操作しやすいUXと優れたデザイン性に重きを置くことで、競合との差別化を実現し、市場での確固たる地位を確立しました。
Uberが着目したバリュープロポジションは、タクシーというサービス本来の利便性。同時に、タクシー利用時にかかるユーザーの手間や精神的な負担の多さにも注目しました。
アプリを活用することで、電話でのタクシーの呼び出しや運転手に目的地を口頭で伝える手間を無くし、事前に料金やルートが表示されることによりユーザー側の精神的な負担を軽減しました。
目的地まで辿り着くための最も早くて効率的な方法という、タクシー本来のメリットを最大化することに成功し、多くのユーザーに利用されるサービスとして定着しました。
Slackが着目したバリュープロポジションは、シンプルなUXと生産性の高さ。
大規模なチームを抱える組織であっても、職場で必要なコミュニケーションが1つのシンプルなツールで完結するように設計し、統合性という観点でユーザーからの指示を集めています。
また、シンプルで使いやすいUXやセキュリティの強固さを同時に実現したことで、現在コミュニケーションツールとしてさまざまな組織に導入されています。
バリュープロポジションを整理する際には、バリュープロポジションキャンバスというフレームワークが用いられます。
バリュープロポジションキャンバスは、自社のバリュープロポジションを的確に把握するためのフレームワーク。アレックス・オスターワルダーの著書『バリュー・プロポジション・デザイン』(2015)で紹介され、注目を集めました。
このフレームワークにはテンプレートがあり、1つ1つの項目を埋めながら顧客のニーズを明らかにしていきます。
バリュープロポジションには、大きく分けて「バリューマップ(顧客に提供する価値)」と「顧客プロフィール(顧客セグメントのニーズ)」といった2つの軸があります。
顧客を理解するために必要な「顧客プロフィール」、顧客のために自社でどのような価値を創造するかを考える「バリューマップ」の2つを重なり合う状態にすることで、顧客のニーズと自社の提供する価値をフィットさせることができます。
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バリュープロポジションキャンバスのフレームワークに沿って、書き方を解説します。
今回は一人暮らし向けの食事配達サービスのバリュープロポジションを例に、それぞれの項目で記入すべき内容をイメージしてみましょう。
自社で提供している製品・サービスを記載します。
例:一人暮らし向けの食事配達サービスのバリュープロポジション
自社の製品・サービスのターゲットを記載します。
例:一人暮らしをしている20〜30代の男女
顧客のジョブとは、顧客が職業や人生において成し遂げようとしていることを表します。ジョブは大きく分けて次のように分けられます。
例: 家事の負担を軽減する、余暇の時間を増やす、楽して健康的な食生活を送る、美味しいものを食べる
ジョブを行うことで顧客が望んでいる結果や得られる恩恵を記入します。あらかじめ想定できるゲインもあれば、想定外のゲインもあります。ゲインは大きく分けて次のように分けられます。
例:買い物に行かなくていい、献立を考えなくていい、栄養が偏らない、美味しくて飽きにくい
ジョブを行ううえで顧客を悩ませていることやジョブの達成に対してハードルとなっていることを記入します。ペインは大きく分けて次のように分けられます。
例:料金が割高、クール便の送料がかかる、量が少ない
自社の製品やサービスで提供しているすべての要素を記入する、バリュープロポジションの基礎となる項目です。
ここで記入した製品・サービスの組み合わせが、顧客のジョブを達成するために必要な要素を兼ね備えているかが重要です。
例:バリエーション豊富でヘルシーな冷凍弁当の配達サービス
製品・サービスによって顧客のGainを生み出すための具体的なソリューションを記入します。
例:バリエーション豊富でヘルシーな冷凍弁当を好きなタイミングで配達
製品・サービスによって顧客のPainを取り除くための具体的なソリューションを記入します。
例:まとめ買いでお得に(一定金額以上で送料無料)、お届け間隔を自由に調節できるようにする、追加で頼めるサイドメニューを拡充
バリュープロポジションキャンバスで明らかになった顧客のニーズに加え、他のフレームワークやジャーニマップなどを照らし合わせることで、自社の提供できている価値と顧客のニーズのズレや、自社ならではの強みを可視化できます。
バリュープロポジションキャンバスを埋めていくことで、1つの項目ごとにさまざまなアイデアが生まれますが、自社の独自の価値をまとめるうえで優先順位をつける必要も生じます。
ジャーニーマップとバリュープロポジションの顧客セグメントエリアを組み合わせれば、顧客のジョブに優先順位をつけることができます。
ビジネスモデルキャンバスは、事業の価値創造を実現するためのフレームワークです。既存の事業の安定や発展に寄与します。
バリュープロポジションキャンバスをこのビジネスモデルキャンバスのなかに当てはめることで、組織内に価値を取り込むことができるようになります。
ビジネスモデルキャンバスは①顧客セグメント、②バリュープロポジション(価値提案)、③チャネル、④顧客との関係、⑤収入の流れ、⑥主なリソース、⑦主な活動、⑧主なパートナー、⑩コスト構造、⑪利益、と11の項目で構成されています。
この①顧客セグメントと②バリュープロポジションはバリュープロポジションキャンバスで埋める「顧客プロフィール」「バリューマップ」なので、そのままビジネスモデルキャンバスの中に組み込むことができます。
リーンキャンバスとは、新しいビジネスモデルを企画する際に最適なビジネスモデルを9つの要素に分けて考えるフレームワークのこと。
バリュープロポジションキャンバスを併用することで、顧客と価値提案がフィットしているかを具体的に見ていくことが可能です。
リーンキャンバスは、①顧客セグメント、②顧客の課題、③UVP(独自の価値提案)、④ソリューション(課題解決)、⑤チャネル、⑥収益の流れ、⑦コスト構造、⑧主要指標、⑨圧倒的な優位性の9つの項目で構成されています。
ビジネスモデルキャンバス同様、①顧客セグメント、③UVP(独自の価値提案)はバリュープロポジションの「顧客プロフィール」「バリューマップ」を当てはめることが可能です。
★リーンキャンバスについて詳しくはこちら
自社の製品・サービスの独自の価値を顧客のニーズにあった形で最大化するバリュープロポジションについて解説しました。
重要なのは、単なる競合との差別化を目的にするのではなく、顧客のニーズを突き詰めて自社の強みを強化していくという視点です。
バリュープロポジションキャンバスを活用し、自社の製品・サービスの独自の価値を考えてみましょう。
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